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約3万4000人という史上最多の自殺者が出ているなか、僧侶で作家の玄侑宗久さんが発表した自殺をめぐる小説『リーラ 神の庭の遊戯』(新潮社)が注目されている。仏教思想に基づく「答え」の提示ではなく、息苦しい世界観を超えていく体験として読むことができる。
物語は飛鳥という女性の自殺を、母、弟、ストーカーなど6人の視点から描き出していく。「残された人たちは、なぜ、と自責の念を抱えて理詰めに考えてしまう。しかし、6人の視点がばらばらなように、どれか一つが決定的な理由ではないはずです」
6人のそれぞれずれた視線をたどることで、しだいに読み手は6人を超えた「神の視線」を感じるようになる。「いいことも、悪いことも、うち寄せる波のようなもの。波に身を任せるのか、波に対抗しようとするのか、その波のなかで遊ぶのがリーラ(遊戯)だと思います」
玄侑さんは『禅的生活』(ちくま新書)など仏教の入門書も書いているが、「小説を書くということは、一つの宗教や宗派に収まらない体験です。入門書では思考の跡を示しますが、小説はたった今生まれてきたものを書き留めていく。ことばの呪縛から逃れようと、次々にことばをはいていく、それが小説であり、小説を読むことは体験なのです」と話す。
『リーラ』では、共時性、輪廻思想、暗在系など、ニューエイジ・ムーブメントの中で注目された思想や、ヨガ、コーヒー浣腸などの流行も総動員されている。
「人生に基本はありません。常に二度と同じことがない応用を生きている。それは小説も同じ。基本を捨てるということは、リーラの世界へ行くということです」
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