(敬称略)
毎日新聞 2008年2月6日朝刊  BOOK WATCHING 編集の現場から 出版部:大室英暁

 「問題を共有している人には、私の言葉はどこかでぜったいに伝わるはずだと確信しています」(本文より)
 ここでいう「問題」とは、「苦しいにもかかわらず、どうして生きなければならないのか?」という疑問を抱えているということで、この「問題」を正面から問うことが、表題にある<問い>の意味です。
 本書は、現代を代表する2人の若手禅僧玄侑宗久師と南直哉師による対談本です。対談は、2007年8月に青森県むつ市の霊場・恐山にて行われました。2日間にわたって約10時間、笑いあり涙ありの真剣勝負。
 真摯(しんし)に「問題」に向き合い、その裡(うち)なる葛藤(かっとう)を言葉によって表現しようとする僧侶がいる以上、日本仏教はいまだ「歴史的遺産」などではありません。
 本書は、20世紀の日本的<近代>神話が崩壊し、いや応なく「問題」に直面せざるを得ない若者たちを主な読者対象としています。「生きるのは苦しいけど、仏教者として生きていく覚悟を決めた」2人の禅僧による現在進行形の思考の軌跡を、対談の臨場感そのままに記録した一冊です。
(定価1890円)


西日本新聞 2008年3月2日  BOOK:新刊

 臨済宗妙心寺派僧侶で芥川賞作家の玄侑宗久と、曹洞宗僧侶で青森県の恐山菩提(ぼだい)寺院代(住職代理)を務める南直哉の対談録。対座していた時間は「遊戯(ゆげ)」の時間だった、という。
 論理と矛盾の「汽水域」=「あわい」にこそ人間の本質があると考え、そこを文学によって表現しようとする玄侑。一方、「生における矛盾」の意味を対話形式でもって語り伝えようとする南。
 「良寛さんの魅力と究極の毒気」についても自由に語り合い、人間の「生きる意味」「かけがえなさ」「他者認識」「言語活動」「慈悲」等々を根底から問い直す。 (佼成出版社・1890円)

『<問い>の問答』