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地下鉄サリン事件が起きて10年になる。その間、オウム真理教は宗教法人アーレフと改名して活動を続けている。
上祐史浩氏率いるアーレフは、オウム真理教の負った賠償責任も受け継いだ。総額38億円あまりの賠償額のうち、これまでに支払った額は15億円ちかい。このうち、アーレフになってからの支払いも、5億円を超えており、2000年には2億円以上払っている。
これは、ふつうに考えたら大変な額面だと思う。しかし新生アーレフは、「今後とも、誠意をもって努力していく」所存だという。
ホームページで見るアーレフの教義は、だいたい仏教とヨーガをミックスさせたようなものだが、微妙に通仏教とは違っている。「願望成就の秘法」という項目に、布施をして功徳を積む重要さが述べられるのだが、その内容もかわっている。ふつうは財施と法施のほかに、無財の七施があり、笑顔や愛語、やさしい眼差し、それから席を譲ることなども布施と言われるのに、アーレフではそうした社会的な行為は重視されないようだ。「安心施」と一括りにされ、とにかく苦しむ人の話を聞いてあげること、と説明される。しかも、そうすればいつか自分が苦しいときに助けてもらえる、というのである。
布施は、自分の願望を成就するための功徳であり、それはどうも積み立て貯金のように、必ず自分に戻ってくるらしいのである。
新たにこの教義を学んだ人々が、どんどん布施している。そりゃあ10年前に10歳だった子供が20歳になるのだから無理もない。事件はそうして風化し、マスコミは拒絶しても、彼らはインターネットという公開の密室を膨らませて成長を続けているのである。
ちなみにアーレフの賠償の主財源は、コンピューターソフト関連の個人収入の布施らしい。大袈裟に聞こえるかもしれないが、現在のアーレフを支えているのは、布施というより、コンピューターそのものなのである。
今や文部科学省は、小学生からインターネットを教えコンピューター教育に力を入れている。オウム真理教の場合も、当時の文部省を喜ばせる秀才たちばかりだったわけだが、今なお文科省は、アーレフの信者を生む土壌を熱心に耕しているかに見える。新生成った宗教団体を闇雲に批判するつもりはないが、少なくとも私は、小学生にコンピューターを教えるのはやめたらどうかと思う。彼らは独自の情報入手法をそこで学び、しかもからだを使っていないから、アーレフで修行したりするのである。 |
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読売新聞 2005年3月18日号・夕刊/3月19日号・朝刊 |
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地下鉄サリン事件から10年 |
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「地下鉄サリン事件」から20日で丸10年。オウム真理教問題に関心を寄せてきた識者3氏が、事件の意味をあらためて論ずる。 |
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「伝統宗教の無力感残る」 上田紀行 (東京工業大助教授・文化人類学)
「他者の近さへの恐怖」 大澤真幸 (京都大助教授・社会学)
「信者生むネット教育」 玄侑宗久 (作家、僧侶)
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