其の八 | ||
今でも受験前の人など、「すべる」「おちる」といった言葉は忌み嫌って使わないのではないか。使わないどころか、聞くのも見るのも嫌だから、もうここで読みやめる人もいるかもしれない。 植物の葦は、「あし」が「悪し」に通じるから縁起でもないと、「よし」と呼ばれてややこしくなった。 「ヨシ」と「アシ」が別な植物だと思い込んでいる人は、案外多いようだ。 スルメをアタリメ、 その時代独特の忌み また鎌倉時代、 神に仕え、無事の即位を祈るため、不浄な言葉は無論のこと仏事にまつわる言葉も言い換えられた。例えば「死ぬ」は「直る」、「病」は「やすみ」、「寺」は「瓦ぶき」、「塔」は「あららぎ」、「墓」は「つちくれ」、「経」が「染紙」という具合である。 じつに涙ぐましい努力だが、なかにはなんとも不思議な言い換えがある。「僧」は「髪長」と呼び、「仏」は「 「髪長」は紛らわしすぎる気もするが、それより不思議なのは「仏(仏像)」の「中子」である。一説によれば、仏像は必ずお 『徒然草』の兼好法師は、第二十四段でそのような慣習を批判するのではなく 忌み側が自ら退くこのような文化的工夫を、法師は神仏を超えて優美だ、趣があると 言い換えてその存在自体は認める、受容するのが忌み詞だとすれば、「ゲンパツ」は受容されないのだろうか。 「ゲンバク」と言い間違える人はいても、まだ言い換え呼び名は聞いたことがない。 |
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東京新聞 2012年11月3日/中日新聞 2012年11月24日【生活面】 | ||
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