福島県内各地の放射線量については、県民なら大抵は把握している。しかし、それが全国各地に比べてどうなのか、となると、皆目分からない人が多い。
どうしてか知らないが、文科省などは全国各地の放射線量を発表しない。そこで三春実生プロジェクトは、北海道から石垣島まで、全国各地のお寺の和尚さんや寺族の方にバッジ式個人線量計を身につけていただき、生活環境のなかでの放射線量を測定していただいたのである。いろいろと面白いことが分かってきたのでご報告したい。(詳細については以下参照 http://fukushima-misho.com/pdf/osl1.pdf)
今回の測定は、北海道以外は各県二地点であるため、その平均が県の平均と考えるわけにはいかない。しかし、こんな地域もあるんだ、ということが分かっただけでも収穫である。
まず申し上げたいのは、年間一ミリシーベルトを超える地点が、各地にあるということ。二〇〇二年、線量測定サービス会社・長瀬ランダウアによる十四万九千地点の測定で、県の平均が年間一ミリを超えたのは十一県だった(富山、石川、福井、岐阜、滋賀、兵庫、鳥取、山口、広島、愛媛、香川各県)。
今回、それ以外で一ミリを超えたのが、新潟、埼玉、千葉、三重、熊本、大分の各県である。前にも申し上げたように、これが県の平均とは思わないでいただきたい。ただ、その県にそういう地点もあるということだ。
埼玉、千葉県などについては、おそらく誰もが今回の福島第一原発事故の影響と考えるだろう。しかし、たとえば三重、大分、熊本各県などはどうなのか? むろん土壌の問題があるのかもしれないが、もう一つ考えるべきなのが、中国から飛来する黄砂の影響である。
一九六三年の「核実験禁止条約」を批准しなかった中国は、一九六四年から九六年までになんと四十六回の核実験を行なってきた。放出総放射性物質は二十メガトンともいわれ、これはチェルノブイリ事故のなんと五百万倍である。すべて地上や空中での爆発実験なのだ。黄砂に含まれる放射性物質の影響は、間違いなく福島第一原発よりも広範囲だし長期に亘る。
問題は、福島県だけではない、という見方は当然できるわけだが、今はそうではなく、私は福島県民もさほど心配しすぎないでほしいと申し上げたい。報告書には「ばらつき率」についても書いてあるが、要するに線量の高い福島市や郡山市なども、通常世界のどこにでも見られる「ばらつき」の範囲内なのだ。除染や一時疎開はしたらいいと思うが、それ以上の心配はかえって我が身を傷つけるのではないか。
全国的にも決して高い線量と言えない会津地方にさえ風評被害が及ぶ現実……。福島と聞けば怯えるこの国の人々が、日本製品は買わないという彼の国の人と、大差なく見えて仕方ないのである。
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