其の四拾 | ||
六月初め、講演のため川内村に出かけた。梅雨の近いこの季節には、山々に白い花が目立つ。田植えの済んだ田圃と、ヤマボウシやミズキの白い花の対照が美しく、車で約一時間ほどの 川内村といえば、これまでは草野心平氏の「天山文庫」やモリアオガエルの生息地として知る人ぞ知る村であった。しかし東日本大震災のときいちはやく全村避難を決め、全国に知れた。遠藤 元々二千九百人あまりの人口のうち、現在帰村して暮らすのは千八百人ほど。県内の都市部に残る人々のほか、県外に暮らす人々も四百人あまりいる。 今年の新年の挨拶で、遠藤村長は「復興は根気と持続力、あきらめないことだと思っております」(川内村HP)と書いているが、「それぞれの判断を尊重し、帰りたいと思った時に、いつでも戻って生活できる環境を整備してまいります」という言葉は、何より村長自身の根気と持続力、あきらめない強さを物語っている。柔らかな風貌とこの強い精神力との格差が魅力的なのだ。柔弱の強さである。 役場の正面玄関には「無事かえる」と刻まれた素焼きのカエルが鎮座する。いわゆる「ゆるキャラ」で、モリアオガエルの「モリタロウくん」というのだが、どうも遠藤村長を感じて笑ってしまう。 おそらく雄幸という名前は、第二十七代総理大臣の浜口 今回村長にお会いしたら、じつは浜口「雄幸」という名前は父親が嬉しくて酔っ払い、そのまま役場に出生届けに行ったため、「幸雄」のはずが逆になったという面白いエピソードをご披露しようと思っていた。だから浜口総理に 太陽光発電事業や、村伝統の井戸掘削、医療体制の整備も進む。相変わらず「 そしてもう一つは、天山文庫の庭に咲いていたシロヤシオ(ツツジ)の美しさである。およそツツジという概念を超え、木漏れ日越しに見上げた空そのもののように、無数の白い花たちが頭上で煌めく。これほど美しい花木の佇まいを、私はこれまで見たことがない。 |
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東京新聞 2015年7月4日/中日新聞 2015年7月18日【生活面】 | ||
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